展覧会レポート

2017

第3回 金沢・世界工芸トリエンナーレ
公募展「2017金沢・世界工芸コンペティション —進化する芸術工芸—」
企画展「金沢の工芸コレクション」

会期:2017年1月21日~2月11日
会場:金沢21世紀美術館 市民ギャラリーA、B

ディレクター: 秋元雄史(金沢21世紀美術館 館長、東京藝術大学大学美術館 館長・教授)

公募展審査員: ロナルド・ラバコ(インディペンデント・キュレーター、元ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン キュレーター)
チョ・ヘヨン(2015清州国際工芸ビエンナーレ 展示芸術監督・キュレーター)
唐澤昌宏(独立行政法人国立美術館 東京国立近代美術館 工芸課長)
大樋陶冶斎(陶芸家、文化勲章受章者、日本芸術院会員)
中川衛(金工作家、重要無形文化財 彫金 保持者)
秋元雄史

企画展キュレーター: 齋藤直子(金沢市立中村記念美術館 学芸員)
金沢市立安江金箔工芸館
加藤謙一(金沢美術工芸大学美術工芸研究所 学芸員)
金沢卯辰山工芸工房
鷲田めるろ(金沢21世紀美術館 キュレーター)

アーティスト数: 227

来場者数: 33,087人

特設サイト: https://kanazawa-kogeitriennale.com/2017/


「第3 回金沢・世界工芸トリエンナーレ」は、公募展「2017 金沢・世界工芸コンペティション」と企画展「金沢の工芸コレクション」で構成されます。公募展では、時代とともに変化し拡がる工芸を世界的視野で捉え、表現力豊かな新しい工芸作品を紹介します。また、企画展では金沢市の美術館・博物館と施設が所蔵している工芸作品を中心に紹介します。新しい時代における工芸表現の可能性と、金沢の工芸コレクションを世界へ発信します。



参加アーティスト

公募展「2017金沢・世界工芸コンペティション —進化する芸術工芸—」

大賞:井川健

優秀賞:中村弘峰

審査員特別賞:津守秀憲、黒田沙知子、尾木卓弥、木瀬浩詞、大村俊二、奈良祐希

入選:Kosmas Ballis、許家慈、河本蓮大朗、浅野芳信、鋤柄大気、小林久仁子、西中千人、具静美、草間喆雄、 Anna Rita Zaccaro、久野輝幸、酒井智也、市川篤、竹村岳、舘正明、呉住典子、福田笑子、大石早矢香、塚田美登 里、北村隆浩、田中隆史、成田順子、鈴木祥太、佐々木雅浩、宮城有加、前川多仁、内海紗英子、磯谷晴弘、羽場文彦、 高橋誠一、瀬津純司、生田丹代子、クニト、西尾太加二、手塚まゆみ、土橋隆弘、都丸篤子、Marc Keane、刘杨、鄭継深、 Ragnhild Monsen、白水英章、小笠原森、小田伊織、樋口奎人、高橋奈己、松藤孝一、加藤千佳、吳竟銍、荻野緑子、 深澤慎太郎、小川宣之、手塚隆、金保洋、戸出雅彦、安達大悟、橋本知成、岡本昌子、永岡かずみ、高田賢三、晁男、 大上裕樹、米元優曜、Eunbum Lee、土岐謙次、望月美鶴、室伏英治、古川千夏、佐藤衣里、有永浩太、藤井常雄、 崎山隆之、風間純一郎、島川千世、佐野曜子、阿波夏紀、山森菜々恵、阿部潤、山口美音、宮岡真希、林祐如、李岱容、 secca、馬場康貴、橋本庄市、Irina Razumovskaya、定池&大友、般若泰樹、松村淳、布下翔碁、Joe Hogan、浦 中廣太郎、下坂邦和、河野太郎、村本真吾、西川雅典、田中陽子、上端伸也、奥澤華、坂井直樹、石山哲也、伊能一三、 森山寛二郎、御前智子、久野彩子、河野迪夫、髙木基栄、林沙也加、佐藤利之、渡邊明、佐治真理子、渡辺知恵美、 加藤直樹、川澄綾子、齋藤直、鄭銘梵、谷口史、田中美佐、箕浦徹哉、キーン竹下桃子


「世界工芸コンペティション・金沢」受賞作品
過去に2度実施された「世界工芸コンペティション・金沢」の受賞作品のうち、
金沢市が所蔵している作品を今回の「2017金沢・世界工芸コンペティション」で展示した。(楢原寛子の作品は金沢21世紀美術館蔵)
アスタリスクを記している作家は、 企画展「金沢の工芸コレクション」に出品。

’99世界工芸コンペティション・金沢
大賞:飯田倫久
優秀賞:堀紀幸、佐々木雅浩*、井上志津*
奨励賞:久保裕子、Vukićević Velimir、Kozak Nadiya、Julia Kunovska*、Henk Wolvers
入選:Yan Zoritchak*

2001世界工芸コンペティション・金沢
大賞:東みを子
最優秀賞:楢原寛子
優秀賞:辻重利、Yan Zoritchak*
奨励賞:曽根洋司、今田陽子*、南佳織、野田由美子


企画展「金沢の工芸コレクション」
「金沢の工芸コレクション」展について
秋元雄史

「金沢・世界工芸トリエンナーレ」の前身は、1989年に開催された「金沢工芸大賞コンペティション」であり、1997年まで2年ごとに継続して開催された。これは、金沢市政100周年を記念し、21世紀に向けて、新たな工芸を発見してこの金沢の地から発信していく趣旨で開催されることになったものである。この時のコンペティションの目標は、金沢という場所に限定することなく、また伝統に縛られることなく、様々な出自や歴史をもつ工芸を対象とし、未来型の、新しい試みに果敢に挑戦している作家の作品を評価していくというものであった。
このコンペティションは、1995年の「世界工芸都市宣言」後の1997年以降には国際会議を併設するようになり、作家や研究者によるシンポジウムや講演会が開催されるようになって、工芸に対する考え方や見方にも気を配っていくようになる。そして1999年と2001年には「世界・工芸コンペティション」として間口を世界に広げ作品を募った。もともと工芸は幅広いジャンルであり、一筋縄では読み解けない領域であるが、海原のように広がる工芸世界を解釈していく努力をしてきた。
美術・工芸の分野は、作品や製品の物が持つ魅力と同時に、その背景や文脈を解釈していくことが重要である。そうでないと何に依拠して評価しているかわからなくなるからだ。これまでも「物」と「文脈」の関係に対して、その重要性を認識し、気を配ってきた。
今回開催する「金沢の工芸コレクション」展もその流れの中にある。タイトルを見てもらえばわかると思うが、金沢にある美術館に収蔵されている作品をベースにした企画である。一口に工芸と言っても美術館の性格によって収蔵作品には様々な方向がある。つまり様々な文脈が存在する。茶道具を中心とした金沢市立中村記念美術館や、金箔を使った作品を中心に収蔵している金沢市立安江金箔工芸館、また大学の学究的な志向を反映し工芸を美術に位置するジャンルとして収蔵する金沢美術工芸大学、加賀藩御細工所の精神を受け継ぐ技術研修施設であり研修者の優れた作品を所蔵する金沢卯辰山工芸工房、現代アートの視点から工芸に関わる金沢21世紀美術館と、こういった具合に工芸のコレクションも様々な解釈によって成り立っている。あえて各美術館のコレクションをつなぐ接点を見つける必要はないかもしれないが、どこかに接点はないものだろうかと企画したのが本展である。天邪鬼的態度ではあるが、そうしたからといって、全体を統合するメタ的な視点を持とうということではない。工芸作品と解釈の問題が想像以上に見方に影響している。つまり目に見えない位置づけや価値の解釈が見方や使い方を無意識に規定しているということを改めて知ってほしいのだ。私達が思う以上に作品は作品それ自体で成り立ってはいない。
接点を探るための接着剤になるのは、「世界工芸コンペティション・金沢」で収蔵してきた過去2回の受賞作である。それぞれの美術館のコレクションと何らかの関係が作ることができそうな受賞作を各美術館のキュレーターや学芸員の方に選んでいただき読み解いていただいた。果たしてどのような解釈が可能となったのであろうか。またそれらは関連づいたのであろうか。それとも全く接点は持てなかったのであろうか。この判断は鑑賞者に委ねたい。


金沢市立中村記念美術館
前田斉広、魚住安彦、十二代 宮崎寒雉、初代 西村松逸、十代 大樋長左衛門、小松芳光、中川衛、大場松魚、九代 大樋長左衛門、中村梅山、松田権六、寺井直次、初代 魚住為楽、氷見晃堂、橋本仙雪

井上志津(「’99世界工芸コンペティション・金沢」優秀賞、金沢市蔵)、Julia Kunovska(「’99世界工芸コンペティション・金沢」奨励賞、金沢市蔵)

金沢市立安江金箔工芸館
玉井敬泉、玉井紅嶙、岸浪柳渓、小松芳光、村田百川、市島桜魚、山本榮子、山田久録、嵐一夫、沢田宗沢、笹田月暁、新井雅峰、高橋介州、米沢弘安

Yan Zoritchak(「’99世界工芸コンペティション・金沢」奨励賞、「2001世界工芸コンペティション・金沢」優秀賞、ともに金沢市蔵)

金沢美術工芸大学
小松芳光、大場松魚(監修制作)、寺井直次(監修制作)、坂下直大、安藤絵美、青木千絵、山脇千尋、高橋介州、中川衛、米田豊也、藪内公美、久禮若奈、和田真以子、木村雨山、毎田健治、東知世、石井健登、北出塔次郎、北出藤雄(不二雄)、宮永春香、池田晶一、薄井歩

名雪園代(「’99世界工芸コンペティション・金沢」入選作品、作家蔵)

金沢卯辰山工芸工房
村上浩堂、中村美佐子、安藤郁子、松永慶、清水真由美、藤野征一郎、細野仁美、神代良明、田中彩、木瀬浩詞、須藤真美子、坂井直樹、塚田美登里、齋藤まゆ、竹村友里、小曽川瑠那、青山恵、靏林舞美、黒田沙知子、村本真吾、藤掛幸智、姜旻杏、吉村茉莉、ツォン・ウェンティン、柳井友一、百瀬玲亜、藤田有紀、黒木紗世、南絢子、田辺京子

佐々木雅浩(「’99世界工芸コンペティション・金沢」優秀賞、金沢市蔵)

金沢21世紀美術館
田中信行、中村卓夫、久世建二、扇田克也

今田陽子(「2001世界工芸コンペティション・金沢」奨励賞、金沢市蔵)


企画展「金沢の工芸コレクション」


イベント

トークリレー
コンペティションの審査員によるトークリレー。 新たな工芸と現在の工芸動向について語った。
2017年1月22日
会場:金沢21 世紀美術館 シアター21
「KogeiとCraft:伝統が喚起するもの」 ロナルド・ラバコ
「継承の再考/未来志向の創造的アイディア」 チョ・ヘヨン
「日本の工芸の現在(いま)を考える」 唐澤昌宏

ギャラリートーク
「金沢の工芸コレクション」展参加施設によるギャラリートークを実施。
2017年1月28日
会場:金沢21世紀美術館 市民ギャラリーB



展覧会カタログ

第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ
公募展「2017金沢・世界工芸コンペティション —進化する芸術工芸―」
企画展「金沢の工芸コレクション」

定価2,500円(税込)

コンテンツ
- 公募展「2017金沢・世界工芸コンペティション —進化する芸術工芸―」
- 審査員評
- 企画展「金沢の工芸コレクション」
- 学芸員による展示解説
- 出品リスト
- 各セクション解説文
- 出品リスト

仕様:185×297 mm
頁数:94頁
言語:日/英併記
デザイン:原嶋亮輔
編集:金沢・世界工芸トリエンナーレ開催委員会、齋藤雅宏、沢井美里
発行:金沢・世界工芸トリエンナーレ開催委員会
発行日:2017年1月21日

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